大正十二年創業 神戸元町 伊藤グリル

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伊藤グリルの歴史

神戸元町の老舗洋食屋「伊藤グリル」は、大正十二年創業。

船のコックとしてヨーロッパを駆け回っていた初代オーナーシェフ・伊藤寛が船を下り、テーブル3つから始めたお店でした。欧州仕込みの経験を活かし、高級洋食屋としてヨーロッパスタイルを踏襲したその店は、颯爽たる洒落た店として当時のステータスシンボルとなり、常連客のちょっとした社交場のような感を呈していたそうです。しかし、この頃は既に第2次世界大戦の最中。順調だった商売も、だんだんと戦争色が濃くなるにつれ、様変わりした社会情勢のため思うように材料が手に入らなくなるなど苦労が絶えませんでした。

終戦後、再スタートを切ったのは昭和23年(1948年)。手に入りにくくなった牛の代わりに馬肉のステーキや、カエル料理などを扱ったこともありました。 一代で神戸指折りの洋食店を築いた寛の隠居後、二代目は三男の禄夫が継ぎ、禄夫の急死後は寛の次男・忠が三代目を継ぐことになります。

現在の「伊藤グリル」を支える二本柱のうちの一本、炭火焼きステーキは、忠の時代になって初めて誕生しました。炭火焼きの手掛け始めは、煙突の設計の加減で、冬場の空気と室内の温度差があるときは煙が逆流する苦い経験も。煙突を高くしたり、穴を大きくしてみるなどの試行錯誤が長い間続きました。その頃の常連客の間では、うまいステーキができあがるのを煙に包まれながら待ったエピソードが今でもよく語られます。そして、現在のオーナーシェフが四代目・享治です。時とともに三代にわたって作り上げてきた「伊藤グリル」の骨組みをきちっと据え、そこに自分らしさを加えていきたい―そんな思いから、完成したのが当店自慢の味・ビーフシチュー。

「伊藤グリル」のもう一本の柱であるこのビーフシチューは、初代・寛からの伝統の一品です。ポイントは、煮込み時間とソースの濃度。最近ではシチューをスープ系の料理だと錯覚して、濃度のないシチューを出しているお店も少なくないですし、誤解されている方もいらっしゃるかもしれませんが、シチューは決してスープ系の料理ではありません。何かお腹にくる重たいものを食べたいときにオーダーされるのがシチューです。 "ソースを食べる"という感覚といえば、わかりやすいでしょうか。そんな伝統の味に、フランス料理をベースに持つ享治が独自のアレンジを加え、自信を持っておすすめできる一品に仕上げました。歴史は繰り返します。古いものが新しく新鮮に写るときがあります。初代からの歴史に触れる度、伝統的な味や作り方を経験することは大きな財産であると実感しています。

洋食を食べるならば、『伊藤グリル』という定評を守りながら、全体をより上げていく。
これからも、伊藤グリルは懸命に新しい歴史を紡いでいきます。